FAQその4
Monday, June 04, 2001 imada.
Q1、熱処理材の疲労強度はどのように考えればよいのでしょうか。
A1
疲労亀裂は物体表面から始まりますので表面状態に大きく影響されます。
下のように、疲労には材料の表面の状態が大きくかかわってきます。
熱処理が疲労強度にかかわってくるのは表面の残留応力状態です。
すなわち表面に圧縮の残留応力があれば、その分疲労強度が上昇します。
表面焼入れ等で積極的に表面に縮残留応力を入れてやると疲労強度が改善されるのはこのためです(熱処理ではありませんがショットピーニングもこの目的で使われます、この場合は塑性変形させることで降伏応力を上昇させるのでさらに効果的です)。
参考までに残留応力と外力による応力状態の概念図を示します。
ただし、これは外力による応力が在留応力値を下回るような状態(すなわち高サイクル低応力疲労の場合です)。
では実際にどの程度疲労強度が上昇するのかですが、これは残留応力状態によって変わるので一概には言えません。
残留応力値がある程度予測できれば、S-Nカーブと対比することにより見積もることは出来るでしょう。
Q2、疲労強度に関してですが入力の片振りを両振りに換算する方法を御教授願えないでしょうか。(S−N線図にて耐久強度を判定したい為)
A2
材料強度学などの教科書に載っていますが、大雑把には以下の様に見積もります。
これを修正グッドマン線図と呼びます。
上図で、縦軸は応力振幅、横軸は平均応力です。
上図で、
A:両振りの時の疲労強度
B:無負荷状態
D:静荷重による降伏応力
E:静荷重による真破断応力
太い実線が平均応力を変えたときの疲労強度の変化を示しています。
また、細い実線の右側では材料は降伏してしまうため、実際には使えません。
上記より、Bから45°に引いた青い線は片振り入力を示します。
すなわち太い実線と片振りの青い線の交点のCが片振りの疲労強度ということになります。
Q3、コイルバネの疲労破壊に関してですが通常破損するのは、径の内側ですがこれの理論的な裏付けはどのように考えれば良いのでしょうか? また、解析モデルにも表現できるのでしょうか?
A3
私はばねについて現場で十分な経験があるわけではないので、一般論として教科書的な考察から推測される原因について述べさせていただきます。
ばねは伸び縮みする時は、その断面内では一様にねじり応力が発生します。
これはご存知のとおり、表面で最も大きくなるような分布となりますが、円周方向には均一な分布となるはずですので、破壊が径の内側から始まる理由にはなりません。
一般的にはばねは純粋に伸び縮みだけを繰り返しているわけではなく、その他の変形モードも含まれるものと推測できます。そのうちの一つとしてサージングのようにばねの線材自体が変形するようなモードが考えられます。
このような変形ではばねの線材は曲がりはりとしてとらえることが出来ますので、下図のように応力分布は径の内側で格段に高くなります(なぜこのような分布になるかは材料力学の教科書の「曲線棒」の章を参照してください)。