FAQその5
Monday, June 04, 2001 imada.
> 部材間接合部の発生応力に関して、
> A部材には、60MPa発生しているのに対し、同じ箇所であるにもかかわらず
> B部材には40MPaしか発生していない。(シェル要素を使用し、A、B部材の板
> 厚 は同じで 発生応力はピーク部の共有しているNODEで確認。)
> ・・・メッシュサイズを細かくし、収束した状態では発生応力は同じ値になると考
> え ますが (作用・反作用)
> いつもは、リメッシュをせずに同程度のメッシュサイズ
> で対策効果(発生応力値)を相対比較しています。
> 尚、評価する応力値は大きい方の部材の値を採用しています。
> 妥当性に関してコメントをいただきたいのですが。
2つの材料の物性値が違うのではないですか?
確かに作用反作用で発生するトータルの力は 逆方向で等しくなるのですが
材料が変化するところでは応力集中が発生します。
これは、形状が変化する時と同じ効果をもたらします。
なぜかというと元の形状は滑らかに連続していても変形した後の形状が
ひずみ量の違いにより連続にはならないからです。
面内に均一に引張られている時など、特殊な場合には発生しないこともありますが
一般的に材料が変化するところでは応力は連続にはならないと思っていた方が
良いと思います。
>公差解析(根二乗和 etc.)に関する参考書等ありましたら
>御紹介願えないでしょうか
公差解析の件ですが、公差解析ソフトCE/TOL 6σを販売している
RAND Worldwide という会社に聞いてみた所、日本ではあまりその手の
書籍や文献を見たことが無いといっていました。
そのかわり以下の書籍を紹介してくれました。
>もともと Texas Instruments にいた方で、
>CE/TOL 6σ の開発グループと一緒に仕事をしていた人の著書です。
>(CE/TOL の開発の何人かも一部記述しています。)
>”DIMENSIONING and TOLERANCING HANDBOOK”
>Paul Drake, Jr.
>Mc Graw Hill の出版なので日本でも大手の書店で注文すれば手に入る
>かと思います。
>先日質問させて頂いた内容ですが2部材の材料は同一です。
>T字型に突き合わせた部材の継ぎ目に発生する互いの応力値です。
これは実際にモデルと結果を見せていただいた方がよさそうですね。
>別件ですが、3角形1次シェル要素で作成した構造物の剛性値がかなり高めに出ています。
>実体(実測値)に対して+33%程度です。
普通そんなもんです。3角形1次シェル要素を使うことは普通推奨されていません。
>尚、同じモデルを三角形2次要素で計算したところ+17%でした。
>・・・いずれもソフトはMN4Wです。
これは中間節点の位置や形状にもよりますがまあそんなところでしょう。
> ちなみに別のソフトで同じ3角形1次要素モデルで計算したところほぼ実体と
>同じ結果を得ました。
これが不思議ですね。特殊な定式化がされた要素ではないかと思います。
なんと言うソフトですか?
>使用しているソフトはCATIA(ver4)のELFINIという
>構造解析モジュールです。・・・線形のみ
>日本でのシェアは殆どないと聞きます。
> NASTRANとの相関を確認したところ同じモデルでは応力値は
>かなり異なりますが、メッシュサイズを細かくしていくとだんだん解は近づいていきます。
結果の違いは要素の定式化の違いによるものではないでしょうか?
NASTRANの場合「非適合要素」を用いているので、要素を
細分割するだけでは一定値に近づいていかないそうです。
しかしそれでも、通常の定式化よりは精度が良いとのことで
昔から採用されているそうです。
ELFINIでは通常の定式化(適合要素)なのではないでしょうか?
(これだと解がちょっと硬めに出る)
非適合要素について比較的わかりやすく書いてあるサイトを
ご紹介しておきます。
私自身もこのような話に過去にずいぶん苦しめられましたが、
プログラムを書くことはしないので詳しくはわかりません。
http://www.hoctsystem.co.jp/story/y_2/y_25.html
> BOUNDARY要素(=接触要素?)に関してですが
>バネ定数はどの程度の値を使用するのが妥当なのでしょうか。
>また、あまり大きすぎると何か問題があるのでしょうか。
これは、私自身接触剛性を指定できるようなソフトを使ったことが無いので
よくわかりません。
一般的に言えば、指定した解析条件において「食い込み量」が
妥当な範囲に収まっているということでしょう。
すなわち、接触する物体の弾性変形量に対して十分に小さいことが
ポイントだと思います。
当然接触剛性大きい方が精度は高くなりますが、剛性の不連続性が
高まるため、計算の収束性が悪化することが予想されます。
この辺はいくつかの条件で実際に試してみて結果の妥当性を
検証しつつ、ノウハウを蓄積していくのが良いと思われます。
ポアソン効果とは何ですか?
物体に垂直力を加えた時(例えば丸棒を引っ張ったとします)、
垂直方向にひずみますが(垂直ひずみ)、荷重方向と垂直方向
にもひずみ(横ひずみ)が発生します。
(丸棒を引っ張った時は断面が少し小さくなります)
これがポアソン効果で、垂直ひずみと横ひずみの比がポアソン比です。
ν(ポアソン比)=横ひずみ/垂直ひずみ
拘束部の注意として述べられる場合は・・・、
垂直力に対して拘束する場合に
力に相対する方向だけでなく
その直角方向(ポアソン効果が発生する方向)
も拘束してしまうと、そのことにより高い応力が発生
してしまうということです。
むやみに「完全拘束」せずに、ポアソン効果による
ひずみを逃がすように工夫して拘束しなさいと
いうことだと思います。
>構造解析のポスト表示に関してですが
>歪エネルギーというのは、どのような見方をするときに
>使用すれば良いのでしょうか。
構造の良し悪しを判定する時に、通常は簡易的に
応力値で判断することが多いのですが、厳密には
外部から入力された総エネルギーがどのように消費
または蓄積されたかをチェックする必要があります。
均質材であれば「ひずみエネルギー密度」の
分布が応力分布と等しくなるため応力で見ても
構わないのですが、異種材料が結合されている場合は
「ひずみエネルギー密度」の分布を見たほうがより
直感的に構造の弱点を見出すことができます。
ひずみエネルギーを最も実用的に使うのは、設計する
部位ごとにグループ化してそのグループの総ひずみエネルギーを
ある一定値以下に押さえるというやり方です。
これは、自動車のボディーなどの振動解析でよく用いられます。
例えば、
ドアパネル、フロアパネル、ピラー、等の一塊の部位の
ひずみエネルギーをある基準値以内に押さえるという
設計方法です。
もっといえば設計時には、各部位の実働時のひずみエネルギーと
運動エネルギーを常にチェックしておく必要があります。
ただこれをすべてやるのが面倒なので、「応力値」と「変形量」いう
便利なもので代用しているわけです。
>溶接部(アーク、スポット)のモデリングは、どのようにするのが
>適切なのでしょうか。
まず最初に-FORCEホームページに載せたメカニカでのスポット溶接と
エンド溶接というのは、便宜上のモデル接続法ですので、実際の
溶接部のモデルをするためのものではないということを確認しておきます。
その上で、溶接部の実際の形状をどうモデル化するかについての説明を
試みますが、これはかなり難しいといえます。
実際にはどの程度の割合で接合されているかがわからないからです。
もう一つは、形状的に不連続なところができてしまい、応力集中が
顕著になってしまう可能性があるからです。
それなので通常は「えいやあっ」で行きます。
まあ溶接部の面積と思しき範囲で2つの物体をつなげて解析してみます。
この場合と右折部周辺を詳しく見たいとすれば、かなり詳細に
モデル化しなければいけないことになります。
溶接部の断面を切り取って形状を忠実にモデル化する工夫が必要かも
しれません。
まずは、溶接部に注目するのかそれ以外のところに注目するのか
を決めることが先決でしょうね。
溶接部以外のところを見るのでしたら、溶接部はおおよその形が
再現されていれば、(ふたつの部材がある面積でつながっていれば)
OKだと思います。
溶接部それ自身に注目したいのであれば、「ズーム解析」の手法等を
使ってその部分だけを詳しく解析する必要があると思います。
初歩的でおはずかしいですが、非圧縮性材料とはどのような特性の
>材料なのでしょうか。御教授願えないでしょうか。
外力がかかっても体積が変化しないような特性ですね。
体積弾性率(K)と呼びますが、これが無限大になります。
ポアソン比0.5の時にちょうど体積変化0となります。
多くの流体(水など)や固体ではゴムが非圧縮性とされ
ています。
式の展開から理解したかったら、材料力学か固体力学の
教科書(または機械工学便覧)に載っていると思います。
ミクロに見ると、原子間の距離がちぢまらない(すなわち
体積が縮小しない)変形挙動を示すものです。
体積が縮小しないで変形するということは、すなわち原子は
位置を移動するだけですね。
構造解析では通常非圧縮性で問題となるのはゴム材料だけ
だと思います。
すなわち、ゴムの場合だけ「ハイブリッド要素」などの特殊な
要素を使用して解析します。
>ポアソン比が0.5になると数式上成り立たないというのは
>どういうことなのでしょうか。
ここでは数式を追わずに概念的なことだけ説明します。
(数式については各種専門書を参照ください)
まず、ポアソン比が0.5であるということは、非圧縮性
であるということを認識しておいてください。
次に、一般のFEMのソフトは「変位法」を用いて解を求
めています。
これは、全体剛性マトリックスを構築した後、まず節点変位を
計算し、その後要素の積分点におけるひずみ、最後に同じく
応力を計算するという手順を取ります。
(現時点では、変位法が精度とコストの点で最も優れ
ていると言われています)
もし、材料が非圧縮性だとすると、全方向から均一な
圧力がかかった時には各節点の変位は0となり、当然
ひずみも応力も0となってしまいます。
しかし外力がかかっているのですから当然有限の応力値が
存在しているはずです。
このように変位法では非圧縮性の物体について解析が
困難になります。
これを避けるために、非圧縮性の物体の解析には
応力法や、「ハイブリッド法」と呼ばれる手法がオプション
で用いられますが、計算時間や精度の点で
問題があるため、一般に用いられることはありません。
このようにポアソン比が0.5の解析ができないことは
通常のFEMが「変位法」を用いていることに起因するも
のです。
>主応力に関してですが、算出する際にミーゼス応力同様要素座標の向きに
>関係しないのはなぜでしょうか
主応力は、応力の6成分のうちせん断応力が消えて垂直応力のみが残る
ように取った座標系で見たときの3軸の垂直応力のことですから、それ自身で
方向は決まってしまいます。
ゆえに座標系を指定する必要はないわけです。
ということは3つの主応力(3次元の場合)はそれぞれに方向を持っている
ことになります。本当は主応力を見るときは方向もチェックしておかなければ
いけませんが、残念ながらメカニカやいくつかのポストでは主応力のベクトル
表示がサポートされておりません(N4Wはどうですか?)。
ベクトル表示(あるいは矢印表示)があるのであれば必ず主応力の方向も
チェックしておきましょう。
>真破断荷重は、TS値(公称応力値)の2倍程度の値を使用すればよいのでしょうか?
真破断荷重は破断時の真応力のことですが、
以下の式より算出します。
σ’=σ(1+ε)
ここで、
σ’:真応力 →破断時の真応力 → 真破断荷重
σ :公称応力 →破断時の公称応力
ε :ひずみ →破断時のひずみ
> 下記計算方法につき御教授願います。
>
> 丸棒が上下から板(F1)で挟まれています。
> この状態で、丸棒を引き抜く際に必要な力:Fを
> 算出する方法を御教授願います。
> モデル図は、添付ファイルを参照願います。
Ø (CAEでは、F1を算出しました。)
これは、簡単に出る代物ではないですよ。
要するに板と丸棒の間の摩擦係数がわからなければ
いけないのです。
摩擦係数さえわかれば。
F=μ*2*F1 で算出できます。
しかし、一般的にこのμ(摩擦係数)は計算事では
出てきません。
表面間の相互作用ですからね。
表面状態や材質などでも変わってきますし。
実験的に求まっているといいのですけれど。
というわけで、まずはμを何とかして求めることが
必要になります。
>材料非線形のことが良くわかる資料がありましたら
>御紹介いただけないでしょうか。
う〜ん、これだという決め手はありませんね。(特に用語に関しては)
専門書では「有限要素法ハンドブック」のTおよびUが非常に良くまとまっていると思います。(高いですけど)
また、ABAQUSの理論マニュアルの和訳で非常に良い資料(ちょっと古いんですが)あるので
住所を教えていただければコピーをお送りしますよ。
> 二枚の板を締結(ボルト、ナット)した箇所のモデリング方法につき
> 御教授願います。(シェル及び、ソリッド要素使用時、)
まずはボルト周辺に注目するかどうかを決めます。
ボルト周辺に注目しないなら、シェルの場合は少し隙間をあけて
ビームでつなげてしまえばよいし、ソリッドの場合も2枚の板の
間を少し間をあけて、ボルトヘッド径の1〜2倍程度の直径の
範囲でつながるようにしておけば実際に近い状況が再現できると
言われています。(微小変形の線形解析の場合、固有値解析のときは
これで十分)
ボルト周辺やボルト自身の応力分布を知りたいとき、または大変形の
時はある程度正確にボルトをモデル化する必要があります。
知りたい情報の程度によってモデル化の詳細度はさまざまです。
接触条件も含めるべきかどうかは問題により変わってきます。
この辺の判断は難しいので、具体的な問題を示していただければ
検討してみます。
(以上)