線形解析の応力集中部では一般的に、非常に高い応力部位がみられる。場合によっては降伏応力や引張り強度をはるかに超えた応力値が見られるが大丈夫なのであろうか?
まず以下のチャートを見ていただきたい。太い曲線は、材料の応力−歪み曲線(SSカーブ)である。
線形解析であるため、上図のように材料が塑性変形する歪み領域に入っても上図チャートのカーブをたどるわけではない。直線部分の傾き(ヤング率)の延長線上の応力値を求めることになる。
たとえば、ある部位の歪み量が2%であったとすると、直線部分を延長して応力は1800Gpaと計算してしまう(上図参照)。
しかし、実際には上図●の位置であるため応力は実はそれほど高くなっているわけではない(ただし、微小領域で降伏し、残留歪みが発生している)。
実際に、このような状況のものを測定すると、1度目の荷重負荷である程度の永久変形が確認されるであろう。
ではこのような物体に繰り返し荷重を負荷したらどうなるのであろうか?
1度目の荷重負荷で前述のように、応力集中部に非常に高い応力が発生し、微小とは言え降伏応力を超えてしまう領域が発生する。2度目以降はさらに降伏域がひろがりだんだんと壊れていってしまうのであろうか?
答えとしては「一定値の強制変位入力の場合は大丈夫」である。なぜなら、1度目の操作で、残留歪みが形成されてしまうと、2度目以降の操作では、それ以上高い応力になることはない、すなわち降伏領域がそれ以上拡大することはないからである。
以下のチャートを参考にしていただきたい。
1度目の荷重負荷で●までひずんだ部位は、荷重を開放することによって○まで戻る。これは、この部位に残留歪みがあるために、周囲の弾性域内でひずんだ材料が元の位置まで戻りきれずに残留応力が発生してしまうためである。
一方で、「一定荷重入力の場合は降伏域は進行する」、ことに気をつけなければいけない。これが、「疲労現象」である。しかし一般には降伏域は非常に小さく、進行も少ないので、繰り返し回数が多くなければ気にする必要はない。これが気になるようであると「疲労」の検討をしなければならないが、ここでは取り上げない。
では非線形解析で、過大な応力部位の実際の応力値とひずみは見積もれるであろうか?(荷重入力の場合で考える)
下図を見て欲しい。
弾性域の傾斜を延長した部位にできる3角形(斜線)の面積と等しい4角形をSSカーブの右側に書いてみる。
これらの面積はすなわちひずみエネルギーであるから、両者を等しいと置けばA点の値が本来の値であると予想できる。