捻紙
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2016年7月28日 (木) 13:30時点における最新版
念紙(ねんし)は、水干絵具や木炭の粉などの顔料を塗布した紙で、日本画制作で下図を本画に転写する際に用いる。
また、リトグラフでも下絵をマットフィルムから版に転写する際に用いる。
日本画の素材は修正が難しいため、制作行程には、あらかじめ描いた大下図を本画に写す。
基底材が薄い和紙や絹などの場合は、「透き写し(すきうつし)」という下図の上に本紙を重ねて透かして写す技法によって転写する。
厚めの和紙や板など透けない素材を基底材にする場合や、壁画を制作する場合には念紙を用いて転写する。
法隆寺金堂の壁画制作にも念紙が使われたことが分かっています。
日本画に用いる念紙は、薄い和紙に顔料を日本酒、水で混ぜ合わせたものを仮に定着させた状態のものとして作ります。和紙は薄美濃紙など薄くて、礬水引き(どうさびき)していない生(なま)のものを使用します。日本酒を混ぜるのは、擦れば剥がれる程度の弱い定着力を持つためです。顔料は水干絵具の中でも微粉末である朱土・黄土・胡粉、または木炭の粉が適しています。中でも朱土は、下地がどんな色でも見やすいため、幅広い制作に活用できます。念紙を用いて転写する際は、事前に大下図の上にトレーシングペーパーを重ね透かして線描を鉛筆で写します。本来この作業は、薄美濃紙等の薄い和紙を用いますが、資源が貴重であることから、現在では洋紙での代用が多くなっています。写し取ったものを、念紙を用いて本画に転写します。竹ペンや鉄筆など先の尖ったもので圧力をかけ、線描をなぞることで、絵具が剥がれて本画に付着します。念紙は一度作れば何度でも使えます。
リトグラフで用いる念紙は、顔料のベンガラ(弁柄)を燃料用アルコールで溶いたものを、刷毛か脱脂綿でトレーシングペーパーにすり込んで簡易的に作ることができます。製版によって消えることからベンガラが用いられます。
取り扱いの注意として、使用後は、念紙の顔料で周辺を汚さないように、ビニール袋や箱に入れて保管しましょう。
念紙と同様の役割をするものとして「カーボン紙」があります。カーボン紙は油脂分を含むため、日本画やリトグラフには適しません。念紙に代用品として、チャコペーパーも市販されています。